弁護士法人デイライト法律事務所「真の離婚問題解決法」

 これまで読んできた著書の中では、離婚問題の決定版だと思った。本書のまえがきには、以下の通り記載があり、何冊か読んできてまさにその通りだと感じている。

「現在書店に並んでいる離婚関連の本は、慰謝料の相場、財産分与の額や方法、養育費の算定法などについての説明に終始しているものばかりで、どうやったら適切に解決できるか、ということについて言及しているものが少なく思います。」

 また、すでに弁護士事務所の無料相談を数か所受けているが、弁護士先生から伺って「そうなんだ」と思ったことも、本書を読むと、たとえ弁護士先生が言ったことであっても、にわかに決めつけない方がいいかも、と思った箇所が複数あった。離婚を考えているのであれば、まずは本書を読むべきだ。 

 裁判では、相手方に財産の開示を求めることはできますが、強制力はありませんし、相手方が財産を隠して噓をついた場合、立証ができません。また、銀行等の金融機関に対して、裁判所を通じて取引履歴を開示させる方法もありますが、これは銀行名と支店名が判明していなければできません。

 …離婚を迷われている大きな理由が「今後の生活に対する不安」や「子どもに悪影響を与える」という場合は、離婚を勧めます(ご相談に来られる方の多くのケースはこのパターンです。)。

 …

 …私は両親が喧嘩したり、いがみ合ったりしている姿を子どもさんに見せるぐらいであれば、早期に離婚すべきであると考えています。

■精神的虐待 (モラハラ)の場合の裏付け資料

 精神的虐待は、言葉による暴力とも呼ばれています。近年は、モラル・ハラスメント(モラハラ)と表現されるようになりました。

 パートナーからの日常的なモラハラを理由に離婚を決意される方は、男女問わず増加して います。筆者の法律事務所では、DVやモラハラ対応にも力を入れているため、特に相談が多いのですが、パートナーから人格を否定するような暴言を日常的に浴びせられ、無力感に苛まれるなど、悩みはDVと同じように深刻です。したがって、早期に離婚を成立させるべき案件といえます。

 ただ、モラハラの場合、その裏付け資料の準備がDV以上に難航します。というのも、モラハラは、言葉による暴力であり、いわば「目に見えない暴力」たからです。 DVの場合は怪我を伴うことが通常なので、診断書等が裏付け資料となり得ます。

 しかし、モラハラの場合は、傷つくのは心です。したがって、客観的に明らかではなく、 日常的なモラハラがあったという資料を得ることが難しいのです。

 そのような特徴を持つモラハラですが、次のものは裏付け資料となり得ます。

【モラハラが言葉による場合】

 まず、モラハラの手段は、その多くが言葉ですので、ICレコーダーなどでモラハラ加害者の言葉を録音しておくという方法があります。

 次に、考えられるのは、モラハラによって、メンタル不調となった場合、心療内科を受診 するという方法です。この際、医師にパートナーのモラハラの内容(発言した言葉など)を具体的に伝えておけば、カルテに記載してくれる可能性がありますので、後々証拠として提出できます。

 なお、被害者の方がよく相手方の発言内容などのメモを作成されている場合もあります。しかし、このメモについては、客観証拠ではなく、あまり証拠価値はないと考えられます。 すなわち、メモは被害者自身が作成したものであり、自己に有利なように虚偽の内容を記載 したり、事実よりも過剰な記載をしたりする可能性があることから、裁判所は重視せず、参 考程度にとどめることが多いからです。

【モラハラが手紙やメールなどによる場合】

 パートナーが手紙やメールに人格を否定するような言葉を入れている場合、この手紙等が 直接モラハラの裏付け資料となります。近年は、手紙よりも、メールやSNS (LINE) による加害行為が増えています。

 メールやSNSを裏付け資料とする場合の注意点については、4(不貞行為の裏付け資料)で述べたことと基本的には同じです。ただ、モラハラの場合メール等に記載された文字そのものが加害行為となります。したがって、証拠としての重要性はより高いといえます。

 …有責配偶者からの離婚請求は、現在の実務では、通常必要とされる別居期間よりも長期間(10年が目安ですがそれ以下でも認められる場合もあります。)を要し、未成熟子がいると離婚が認められない可能性もあるというイメージでよいでしょう。

 親権を希望する場合、裁判所がどのような判断基準で親権者を指定するか押さえておく必要があります。

 一般に、親権者の指定において考慮すべき具体的事情としては、父母の側では、監護に対する意欲と能力、健康状態、経済的・精神的家庭環境、居住・教育環境、子に対する愛情の程度、実家の資産、親族・有人島の援助の可能性などであり、子どもの側では、年齢、性別、兄弟姉妹関係、心身の発育状況、子ども本人の意向などがあげられています。

 そして、実際の裁判では、次の諸原則が重視されて親権者が指定されています。

①監護の継続性(現状尊重)の原則

②母性優先の原則

③子どもの意思尊重の原則

④きょうだい(兄弟姉妹)不分離の原則

■財産分与の諸問題

 離婚が成立する前に、すでに別居しているというケースは多くあります。

 例えば、妻が子どもを連れて実家へ帰るような場合です。別居期間が長くなると、その間に夫婦の財産が増えたり、減ったりすることがあります。この場合、いつの時点を基準として財産分与の対象財産を確定すべきかという問題があります。

 この問題について、別居時という考え方離婚時という考え方があります。最高裁判所は民法768条3項の「一切の事情とは当該訴訟の口頭弁論終結時における当事者双方の財産状態の如きものを包含する趣旨」であり口頭弁論終結時における当事者双方の財産状態を斟酌して分与を命じても違法ではないと判示したものがあります。…下級審においては、別居時という考え方に立つ裁判例と離婚時という考え方に立つ裁判例があり、個々の事案に応じて判断しています。

 清算的財産分与制度(民法763条3項)の趣旨は結婚中に形成した財産を夫婦双方の財産形成について貢献度・寄与度を考慮し公平に分配することにあります。かかる趣旨からすれば財産分与の基準時については離婚時か別居時のいずれが正しいというものではなく個別の事案に応じて判断すべきであると考えます。多くの場合、基本的には、別居時と考えられますが、上記の例のように別居していても、妻が子どもを養育している場合には未だ協力関係にあると言え、離婚時と判断される可能性があります。

 …裁判所が破綻の抗弁を認めてくれるのは、限定されています。以下では、破綻の抗弁を主張する場合に裁判所が重視すると思われる要素をご紹介します。

①別居の有無

 不貞行為があったとされる時期に、夫婦が同居を継続していたか、既に別居していたのかという事実は、必須の要件とまではいえませんが、重要な意味をもつとされています。

 別居の期間は、離婚裁判の中で夫婦関係が破綻していると認められるために必要な期間ほど長期間でなくともいいとされているようですが、それでも半年や1年の別居では破綻を認めていない裁判例が多い状況です。なお、いったん別居したとしても、後日再び同居した場合には、破綻が否定される傾向にあります。

②離婚話が進んでいたこと、離婚調停申立ての有無

③夫婦仲が冷えきっていること

■婚姻費用の諸問題

 義務者が住宅ローンを負担している場合

 …その具体的な算定方法として、家裁の実務では、夫の年収から住宅ローンの年間返済額を控除し、その年収により算定表を使って適正額を算出する方法などが行われています。

男はつらいよ 令和

男はどこまで我慢するべきなのか 妻の言動は虐待なのか性格の問題なのか線引きの難しさ そしてそれゆえに離婚の成立要件にならない現状 これらの問題に正面から取り組む

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