宗像充「引き離されたぼくと子どもたち」
この本すごい。実名で赤裸々にここまでプライベートのことを書く勇気がすごい。夫婦の行き違いが書かれたくだりは、誰しも思い当たる節があるのではないだろうか。
新しいアパートに引っ越した最初の日から、俊枝との口論は珍しくなくなっていった。それはたとえば、ぼくがりんごを切ってその切り方が大きすぎるといったようなささいなことがきっかけだた。ぼくからすればささいなことで彼女が機嫌を損ね、ぼくがそれを取り合わなかったり、理屈で返したりすると、彼女の怒りが止まらなくなる。原因がわからずぼくが狼狽する。はじめての経験だった。
多分彼女は、物事の正しさや解決を求めていたのではなく、自分の感情をぼくに受け止めてほしかったのだろうお風呂のマットの干し場所のことで、彼女に苦情を言われたことがある。「私にとっては重要なこと」と彼女は言った。ぼくはそう思う人がそうすればいい話で、ぼくがそのやり方にあわせなければいけない理由がわからない。それにすべてのことの責任をぼくが負えるわけでもない。人は人、自分は自分だ。
0コメント